トピックス

第19回 日本LD学会・自主シンポジウム報告記録〜 YMCA ・表現・コミュニケーション学科 6年間の歩みから 〜

去る10/9〜11の3日間、第19回・日本LD学会が、愛知県立大学を会場に開催されました。全国から集まった参加者数は延べ7,000人を超える大規模な学会でした。

LD学会の基本テーマ、『通常学級における特別ニーズをもつ子どもの支援』〜子どもの学びを保障する連携〜については、「特別支援教育」「発達障がい支援」ともに、近年の学校教育の現場では避けることはできない子どもたちが抱える大きな課題と言えます。学校集団の力を借りることで緩和される課題がある一方で、限りなく個別対応が必要とされるケースなど・・・。
今さらながら、子どもたちの個別課題の多様化に、性急な解決だけに走ってしまうことなく、目の前にいる子どもたち、生徒たち1人ひとりにとって、安全で安心な居場所としての「学校」とは、何かを考える貴重な3日間となりました。

今回はこの学会で、学科設立準備当初から、そして現在も学校アドバイザーとして週2回勤務しながら、学校外部からの視点で関わっているYMCA・表現・コミュニケーション学科(以下、表・コミ)での6年間の集大成とその足跡を、『多様な不登校経験を持つ生徒たちの高校の取り組み』と題して、LD学会2日目の自主シンポジウムで発表することになり、私もスタッフの一員として、発表時の司会進行の大役を務めることになりました。
今月のメールキッズ通信では、当日の発表内容を編集してお届けしたいと思います。

発表演題 
 ●「仲間つくり」
 ●「性教育」
 ●「学習」(教科)
 ●「サポートクラス(専門機関)との連携」
 ●「未来にむけて」

まずはじめに、「表・コミ」は、大阪・土佐堀の大阪YMCA会館の4階をメインベースに今年で6年目、3期生を卒業させ今日に至っている全日制の高等学校です。
現在の表・コミ設立の大きな原動力となったのは、1996年より大阪YMCAで稼働した、発達障がい児を対象とする「サポートクラス」がはじまったことに起因しています。
YMCAと言えば、誰もが知っている野外活動・体育館活動などがありますが、これまで取り組んできた多くの集団活動のなかで浮かび上がってきた子どもたちが抱える課題への対処や対応を模索する中で、『発達障がいを持つ子どもたちや、特別支援を必要とする子どもたちの実態把握や、課題への配慮』は何よりも重要だったのです。

また、実践活動の現場で浮かび上がってきた多くのケースには、学校に行けなくなっている子どもたち、自分自身の課題に気づけず、引きこもってしまった子どもたちへの療育的サポートが急務でした。
しかし、その一方では、課題にぶつかる誰もが、再び学校へ行きたいと願っていることがわかり、「毎日学校に行く」という、基本的な生活習慣を取り戻していきながら、なおかつ安心して通える「場」の提供が、いかに大事であるかについても気づかされたのです。
日常生活の中で当たり前に行われる、決まった時間の確保、丁寧な繰り返しの言葉かけなどの配慮と、その必要性が益々色濃くなる中で、表・コミは2005年にスタートしました。

1学年30人という少人数のクラス編成ではありますが、2名の複数担任を配し、カウンセラーや特別支援教育士スーパーバイザーが常駐する体制を作りながら、生徒たち1人ひとりの安全と安心の場を作り出すことから、人への関わりの大切さを体験し、何より学生の本分である「学ぶ」ことの楽しさを再発見していくことで、生徒自身の自立を促していく場としての、表・コミスタートは大きな意味があったと思います。

毎年、入学が決まってのまず最初のページは、学校に行きたくても過去のいじめの記憶や、学校生活になじみにくいと思いこんでいる生徒たちに寄り添うことからはじまります。
生徒たちが少しでも緊張から解放され、表・コミでの新しい生活に向かえるための経験としてのファーストステップに「仲間つくり」の取り組みが準備されていますが、今回の発表では、3年間を通して行われる「仲間つくり」のプログラムが丁寧に順を追って紹介されていきました。

生徒たちの姿を河原の石に例えると、はじめは、みんながごつごつとした荒削りの石のようですが、仲間との時間経過と共に、互いに協調し調和していくうちに、丸くて穏やかな安定した形へと変化していく成長の様を聞きながら、目の前に1人ひとりの生徒たちの顔が浮かんでくるような不思議な気持ちになりました。
課題の有無や複雑さだけに振り回されることなく、在学中の時間をかけて、ゆっくりと少しずつでも自分を開いていく…、そんな生徒たちの表情の変化が何よりもうれしい出来事となっていきます。
大切に扱われたからこそ、大切に人に接することができるようになっていく・・・、あたり前のことですが、在学中のさまざまなプログラムを通して、たくさんの分かち合いの場面に遭遇していくことで、誰もが互いの絆を深めていきます。
そんなつながりのチャンスが、生徒1人ひとりに確実にやって来るのがわかる学校なのです。

〜とは言うものの、正直なところ、日常はそんなに簡単なことばかりではありません。新しい仲間ができ、安定した通学ができるようになり、学校生活を楽しめるようになった生徒たちですが、特に友だち関係に目を向ければ、思春期特有の男女間の性差の問題、自尊感情、1人ひとりの命の大切さなどが生徒たちに降りかかってきます。
今回の発表に於いても、仲間つくりの延長線上にある大切な課題として、表・コミが「性教育」について、どのような配慮と取り組みをしているかについて発表しました。

「性」についての課題は、最終的には自分自身の生き方につながることである大切な命の問題と直結していると考えていることに、会場の皆さんが熱心にうなずいておられたのは印象的でした。
ありきたりの知識の伝達では、とても生徒たちの心の奥深くまでは届かないという日々の関わりの体験から学んだことは、いかにそのときどきの生徒の状況に合わせて指導者側が柔軟に変化することできるか…でした。

同様に学習指導の面でもこれらの経験は、確実に活かされていると言えます。
長く不登校を続けていた生徒たちが、毎日学校に登校することで自分自身の課題に気づき、そして自分自身を成長させていくプロセスに寄り添えるのは私たちの喜びであるのは言うまでもありません。
かつて学習困難の生徒として、学ぶことをあきらめかけていた生徒たちも、それぞれの学習ペースを取り戻しながら学ぶ在学中の体験から、卒業時には、自分にあった適切な進路選択を見極め、取捨選択していくことができるのは、何よりもうれしい出来事です。

さまざまな個別課題が、集団の場で、互いの良さを活かし合いながら、成長を遂げていけるその背景には、冒頭でご説明したような「サポートクラス」との連携が表・コミにはあるからです。
特別支援教育士・言語聴覚士・臨床心理士など、専門家集団のサポートによって、学校場面がより充実し、有益に稼働していることが表・コミ全体の環境にとっては大変ありがたいことです。
生徒1人ひとりの必要に応じて、ときには集団で、またときには個別でしっかりと支えることができるのも、表・コミの大きな特徴であることが、今回の学会で改めて整理されたことも大きな成果でした。

生徒たち1人ひとりの成長とともに、彼らによって気づかされたさまざまの出来事が、現在の表・コミの骨格を作り上げていると言っても過言ではないでしょう。

生徒に寄り添うことの意味、そして生徒とともに作り上げていくことのひとつひとつがすべて「表・コミWAY」であり、そして、同時にそれらすべてが表・コミに与えられたミッションです。

表・コミのミッションを、これからも出会うすべての困難な課題を抱えている子どもたちに届け続けたいと、学校に関わる1人として願っています。

思えば、あっという間の6年だったような気がします。
表・コミと一緒に歩んだ6年に感謝です。

〜たちのゆみこ〜