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世界を圧巻させた日本人の調和と規律〜東日本大震災から一ヶ月〜

3月11日の午後2時すぎ、東北地方を中心に勃発した思いがけない大規模地震から早くも一ヶ月以上が過ぎました。

いまだ余震が続く不安から解放されることなく、毎日のように出される地震情報に、震源地からはるか遠くに住む私たちでさえも、日常の不安は消えません。

被災地では、すでにこれまで身体に体感する地震発生回数が、この1ヶ月で300回以上を越え、震度5以上の余震も70回以上を越えるそうです。もちろん地震のたびに津波への不安もあり、どんどん塗り変わる地震発生の回数に、まだまだ予断を許さない毎日です。そのうえ、今回、世界中を震撼させているのが「福島原発」の問題です。いまなお危険と背中合わせの状態に置かれているたくさんの被災者のみなさまの、一日も早い復興を願わずにはいられません。

今回、地震発生後、世界中からたくさんの励ましの言葉と共に、復興のための祈りや具体的な支援活動が伝えられ、世界中の多くの人たちが、宗教や文化や国籍などあらゆる垣根を越えての支援のニュースを聞くたびに、人のつながりの大切さを改めて思うこの頃です。私事ですが、被災地と私の住む大阪との距離感がまったく把握できないためか、海外にいる多くの友人たちから、今でも頻繁にメールと励ましの電話をもらいます。そして、そのたびに必ず話題になるのが、海外の人たちが異口同音に賞賛している日本人の規律を守った生活態度と、緊急災害時に於いても守られ続けるルールと調和についてです。

このように海外のニュースにも頻繁に取り上げられ、賞賛される「和」とは〜、どのようなものなのでしょうか?

震災後すっかりお馴染みなったテレビのCMでも、「つながり」が、これからの復興の大きなテーマになっています。たとえ空腹を満たすすべが見つかったとしても、雨風をしのぐ場が与えられたとしても、やはり人には人が必要なのでしょう。どんなにつらく厳しい時にも、人は人によって救われることを信じ、私にもできる長い支援を考えてみようと思う毎日です。

そこで今回は、『日本人の春夏秋冬』(小学館)・新谷尚紀(民俗学・国学院大学)著を参考にしながら、伝統的な年中行事と人々のつながりから日本人気質を探ってみようと思います。

新谷氏は著書の中で、「人類は皆、ハレとケ、オフとオンのリズムで生きています。オフ(=休み)をうれしいと思う感覚がある以上、人類にとって、年中行事は永遠なのです」と書かれています。また、さらに読み進めてみますと、「日本の行事の中身は時代を経て大きく変化しているのが事実です。元来、日本の伝統行事は、そもそも農耕生活に関連していますが、ある時代までは、余裕のある上流階級だけに伝えられてきたものが多かったのです。現在も残っている伝統行事の大半は、高度成長期を経て一般家庭にも広まるなかで残ってきたものです。ひなまつり・端午の節句など、主役である女性と子どもが喜ぶものが、現存する伝統行事のほとんどであるのも事実です」と。

このことに関連して、朝日新聞の読者とつくるbetweenで、「伝統的な年中行事を大事にしている〜?」というアンケート記事を見つけました。伝統というものは廃れると思いがちですが、アンケートの結果は、意外にも9割を越える人たちが、伝統的な年中行事を大事にしているとの解答だったようです。「日本人気質」の分析から少し脱線するかもしれませんが、おせち料理や雑煮でお正月を迎え、節分には豆まき、桃の節句にはひな人形を飾るなど、伝統行事は決して失われていないという訳です。
たまたまアンケートが実施されたのが2月上旬だったため、解答の大半が「豆まき」にまつわるものでしたが、エピソードの中に、集合住宅で妻と2人暮らしの男性から、「子どもたちがいた頃は、『恥ずかしいから大声ださないで』と言われたものだが、今は大きく声を張り上げて『鬼は外!福は内!』とやっています」と書かれています。
また、別のエピソードでは、子どもの成長と年中行事が深く関わっていることを示唆するものがあります。「子どもも大学生、さすがに豆まきはしなくなりました」など、子どもの成長によって中断されることはあるようです。

そしてさらに、年中行事が「食」と関連しているという興味深い指摘があります。これこそが、「感謝」の裏側にある、自然の恵みや豊作についての人々の深い思いです。
前述しましたように、日本の行事の大半は農耕生活と深く結びついているのもたぶんその為でしょう。

特に日本の祭りはその色彩が濃く、「天変地異」までも感謝して受け止める風土が、もともと日本人の心の底には流れているのです。そのうえ、豊作を祝い感謝を捧げる、それ自体が単なる長い習慣からだけでなく、家族の無事を祈りたいと思う気持ちや、季節の節目を楽しみたいという思いが形になって祭りに現れているのです。要するに、単に豊作を祝うだけに止まらず、災害や緊急時だからこそ祈りを〜というのが、感謝の気持ちの根底に存在しているのです。

神社/仏閣の奉納にまつわる歴史を振り返ってみるとすぐにわかりますが、感謝とはイコール祝い事だけを指すのではなく、痛みや苦しみを回避しようとする人々の願いからも起因することが、私たちの生活習慣の中には潜んでいます。従って「伝統行事」とは、単に家族という小さな単位の絆を強めるためだけの出来事ではなく、町や村など人々の暮らし全体にまつわる結束力を高めるための、仕掛けとして永年に渡って私たちの暮らしに根付き、たくさんの役割を担って、確実な時を重ねてきたと言っても過言ではないでしょう。

四季を愛で暮らしを守る、そのひとつ一つの行為が人々との「つながり」を紡ぎだす伝統行事によって支えられてきたのが、日本の至る所で見られる風情なのです。連綿と続く日々の暮らしの中で、「つながり」を大切に生きてきたからこそ、世界を圧巻させてしまうような緊急事態に直面する今も、「和」を持って事実を受け止めることができるのでしょう。

つながりによって生きる人々の暮らしが、被災地東北にたくさん存在していることは間違いないでしょう。だからこそ、確実にこの難関を乗り切ってくださると信じています。

「つながり」は人々の生命を守り、そしてまた人々の生命を歓喜させてくれる要だからです。

被災地への思いを込め、これからも続く長く厳しいときを、共に生き、共に祈る一人でいられたらと思います。

被災地の一日も早い復興を祈り、心からの鎮魂を込め、今月のメリーキッズ通信を、みなさまにお届けします。

たちのゆみこ