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OECD(経済協力開発機構)創立50周年記念調査 「より良い暮らし指標」「暮らしやすさと国民の幸福度」について

去る5月24日付けで、OECD(経済協力開発機構)から加盟各国の豊かさを示す「より良い暮らし指標」が発表されました。

この指標は、OECD創立50周年の記念として実施され、暮らしの11分野(住宅・収入・雇用・共同体・教育・環境・ガバナンス・医療・生活の満足度・安全・ワークバランス)について、34ヵ国間の比較をもとに調査されたものです。

今月のめーるきっず通信は、今回発表された「良い暮らし指標」をもとに、「暮らしやすさと国民の幸福度」について、みなさまにお届けします。
それでは、最後までおつき合いくださぁ~い!!

 ◆ 『良い暮らし指標』 ー国民の幸福度についてー
今回の指標についてOECDのグリア事務総長は、『この指標は、知識と理解の境界線を先進的かつ革新的な方向に押し広げるもので、世界中の人々は、この指標によってより良い暮らしのためのより良い政策を生み出す可能性を持っています。』と語っています。

ところで、「世界一幸福な国はどこ~??」と問われて、みなさんがふっと思いつく国はどこでしょうか??たとえば、「ブータン」はいかがでしょう。昨年の3/11大震災後、初の海外からの国賓として日本を訪問されたブータン国王夫妻の笑顔の訪問は、私たちの記憶にも深く刻まれています。滞在中のブータン国王夫妻がメディアでたびたび紹介されるたびに、私たちは金銭的・物質的豊かさだけでなく、精神的な豊かさや暮らしの質を大切にする考え方に感銘を受け、共感した方もきっと多かったことでしょう。

さて今回の調査によって、日本は参加国中19位という結果となりました。1位に輝いたのはオーストラリアでしたが、その比較が下記の図になっています。

グラフ

前述の11項目を花びらに見立てて表していますが、各項目の評価が高ければ,対応する花びらが、大きくなるように描かれています。

そして今回の調査の結果、日本は「安全」(1位)「教育」(4位)などの花びらが大きい反面、「収入」や「ワークバランス」「生活満足度」が小さくなっていることが判明しました。

それでは次に、それぞれの項目について検証してみます。
◆住宅
持ち家率は62%あり、OECD23ヵ国平均の67%を下回っていますが、意外に住宅の1人当たりの部屋数は平均1.8室で、OECD平均1.6室を上回っています。しかし、基本設備についての調査で、戸内水洗トイレのない住宅が6.4%で、OECD平均の2.8%を大幅に上回っているという実態でした。

◆収入
花びらは小さいですが、加盟国中7位で、実態はそれほど悪くないというのが今回の結果です。但しこの項目には、家計の年あたりの税引き後の収入と家計の金融資産が含まれています。ちなみに世界でも、個人の貯蓄の高い国としてのランキングではトップを走っているとのことで、日本の1人当たりの収入平均が世界16位でも、資産効果が高いためにこのような結果になっていると考えられます。

◆雇用
日本では15~64歳までの労働人口の約70%近くが有給の仕事に従事していてこの数字はOECDの平均就業率65%を大幅に上回っています。
国内では雇用の悪化が問題視されていますが、1年以上失業している者の割合も1.99%とOECDの平均を下回っているのが現状です。

◆コミュニティー
日本では,国民の90%が自分に必要なときに頼れる人がいると考えているそうです。しかしその一方で、過去1ヵ月間で他人の手助けをしたことがあると答えたのは約23%で、意外にもこの数字はOECDの加盟国では最も低い値なのです。

◆教育
高校卒業レベルの学歴を持つ25~64歳の成人は87%に達しているのが日本でこの数字はOECDの平均73%を大幅に上回っています。
また、ちょっと意外かもしれませんがOECD諸国の中でも「読解力」がトップレベルにあるそうです。

◆環境
人の健康を害し寿命を縮める可能性があるPM10(大気圏汚染度を示す環境基準に使われる数値)のレベルは,日本では一立方メートルあたり27.1マイクログラムで、これはOECDの平均22マイクログラムを上回っています。
 「3.11」以降の数値変更もありうることを想定すると、この数字の変化については、今後も注意が必要でしょう。

◆ガバナンス
日本における投票率は67%で、OECD平均72%を下回っています。
しかし意識調査では、日本の政治制度を53%の人々が信頼していると回答しているのも意外なところです。

 

◆健康
OECD諸国の中で平均寿命が最も高く、人口全体で82.7歳です。
肥満率も全人口のわずか3.4%で、これはOECD加盟国の中で最も低い数字です。しかし日本では、「あなたの健康状態はいかがですか?」の問いに対して、「健康です」と回答したのはわずか33%でした。
この数字はOECD平均よりもはるかに低く、加盟国の最後から「2番目」だったというのも不思議です。
日本人の「健康観」は、個人の自覚よりも、周りからの影響によって強く左右されているのかもしれません。

◆生活満足度
上記の「健康」にも現れているように、自分の生活に満足している人は40%しかなく、OECD諸国の平均59%を、ここでも大幅に下回っています。

◆ワークバランス
子どもが就学する頃から母親が就業するのは66%で、この数値はOECDの平均に近く、家庭と仕事を両立することができていることを示しています。
日本人の労働時間は年間1714時間で、これも平均を下回っています。
しかし、日本では自身の身の回りのこと(食事/睡眠)、余暇(友人や家族とのつきあい、趣味など)にかける時間は一日の60%、すなわち14.3時間しかなく、これも平均を大きく下回っています。
察するところ、日本では通勤時間が長いため、労働時間がほぼ平均並みであるにもかかわらず、身の回りや余暇にかける時間が短いのかもしれません。

◆安全
過去1年間の間に、暴行の被害を受けたと回答した人は日本ではわずか2%でした。この数字は言うまでもなく平均を下回ります。暗くなってから路上で不安を感じる人の割合が仮に高くても、実質、日本は世界屈指の安全な国であるようです。

このように日本人は、所得、収入、雇用、住宅など物的生活条件は悪くないものの、自身の健康状態や生活満足度、路上で不安を感じる割合など、主観的な質問に対しての評価が曖昧で低いと言えそうです。
要するに感覚的な出来事に対し、「慢性的不安感情」が根強いのかもしれませんが、見えない敵、予測できない出来事に対応する力の弱さを克服して、これから先の日本の未来をどのように舵取りしていけるかです。

今月の通信を書き終え、世界水準での「暮らしやすさと国民の幸福度」を比較しながら、来るべき日本の未来を少し予見したような気がしています。

世界経済の行方、原発問題への対処と、未来へと続く暮らしの水準を維持していくための努力は、これから先も惜しまないにしても、 「幸福度」の維持については、難しい~とため息をつくよりは、ひとり一人の心の持ちようからですよね!!

さて、みなさまのご感想は、いかがでしたでしょうか?????

たちのゆみこ