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世界の算数「ドイツは足し算、日本は引き算~?!」

突然ですが、世界にはいろいろな計算の方法があるのをご存知でしょうか?
海外でお買い物をしたときに、ふっと「あれ~この計算の仕方は、何だか違うなぁ~???」と思ったりした経験のある方もいらっしゃるかもしれませんね。

そう~、そうなんです!!!
ちょっと、違ってて、不思議だなぁ~っという
計算の方法が世界にはいろいろあるようです。

そこで今回の「めーるきっず」通信では、ドイツの計算方法をご紹介します。

もちろん、ドイツでは全く普通の計算方法ですから、正しいとか違ってるとかの話ではありませんので、世界のおもしろ話のひとつとして最後まで楽しんでください。

それでは、はじまり~♪

例えば、ドイツのスーパーマーケットで、合計18.50ユーロ分の買い物をしたとします。
会計レジで20ユーロ紙幣を1枚支払った場合、おつりの額は、20ー18.50=1.50ユーロ。
おつりの算出には、20から18.50をマイナスする「引き算」を使うというのが、少なくとも、私たち日本人にとっては自然な発想です。要するに、日本人ならごく当たり前のように「引き算」をする場面で、なぜかドイツ人は、真逆の「足し算」をすることが当たり前なのです。

今では、たいていのお店にレジスターがあって、おつりは自動計算してくれますから、店員が暗算する必要などありませんが、おつりの自動計算機能がついていないレジでは、ドイツならではの計算方法にお目にかかることができます。

さて、どのような展開になるのかと言いますと、レジに座っているのは、小学校以来、ドイツ式の計算方法のみを習ってきた店員。
レジスターはおつり額を表示してくれないので、自ら暗算するしかありません。

レジ係は、買い物の合計金額「18.50ユーロ」と、お客が差し出した「1枚の20ユーロ紙幣」を見比べつつ、おつりの計算をはじめるわけですが、このとき、レジ係の頭に浮かぶのはなぜかあくまで「足し算」。
はたして、足し算だけでおつりの計算なんてできるのでしょうか?
そして、いよいよ不思議な計算がはじまります。

なお、参考までに付記しますと、ユーロ通貨圏には「ユーロ」と、その下の単位「ユーロセント」という通貨が流通しており、100ユーロセントが1ユーロに相当します。

それでは、ドイツ式おつりの計算方法を追ってみましょう。

まずレジ係は、お客さんに50ユーロセントのコインを1枚差し出しながら、「19ユーロ」と言います。
この時、レジ係は「18.50(買い物合計額)+0.50(おつりの一部分となる)=19.00ユーロ」という足し算をしています。続いて、レジ係は1ユーロのコイン1枚をお客さんに差し出し、「20ユーロ」と言います。
ここではレジ係は、「19ユーロ(上記の小計額)+1ユーロ(これも、おつりの一部分となる)=20ユーロ(客が支払った額)」という足し算をしているのです。

式1

※本文に出てきたおつりの金額。
 1ユーロと、50ユーロセント。
 50ユーロセント硬貨の方が、若干大きめです。

ですから、「19ユーロ」、「20ユーロ」と、いちいち金額を声に出すレジ係が多いのは、お客さんも一緒に金額確認して下さいよ~というメッセージのようなものです。
なにはともあれ、これでめでたく、お客さんの支払った「20ユーロ」と同額になりました。
要するに、レジ係がおつりとして差し出したのは、50ユーロセント1枚と1ユーロ1枚。
合計1.50ユーロですから、おつりの金額は見事に正解ということになって、無事、計算が終わるのです。

つまり、おつりを算出する際、「お客さんが支払った金額から、買い物の合計額を差し引く」という発想ではなく、「お客さんの支払った20ユーロに到達するためには、買い物の合計金額である18.50ユーロに、あと何ユーロをプラスすればいいのか?」を算出するのがドイツ式思考なのです。

引き算の暗算で、ほぼ瞬時におつり額をはじき出す日本式と違い、目的の金額に到達するまで、コイン1枚1枚、または紙幣1枚1枚を、段階を追いながら加算していくのが、ドイツ式計算と言う訳です。

こんな具合ですから、合計金額がわずか2.17ユーロだったところに、うっかり100ユーロ紙幣を払おうものなら、ドイツ式おつり計算方法では、100ユーロに到達するまでに相当な時間がかかるのも事実。
しかし、客がいかにイライラしたところで、レジ係は上述の「ドイツ式おつり足し算」に没頭していますから、せいぜい足し算の邪魔をしないよう、大人しく待つしかありません。

レジの有る無しに関わらず、計算をしている様子をみていますと、どうもほとんどの場合が「足し算」を基本にした計算になっていることに気づきます。

ドイツの小学校に子どもを通わせていた友人、子どもの宿題につき合ったときの苦労話のひとつが「算数」で、最も理解に苦しんだのも計算方法が、日本とはまるで違うために、最後はついていく事ができなくなったという話を聞きました。

例えば、こんな計算問題を解くとすると、日本では下記のような計算になります。

式2

しかし、ドイツの計算では下記のような表記になり、計算しています。

式3

ドイツ式では、計算は一の位から始まらず、1027×200からスタートしていて、表記方法も違います。
子どもは日本の計算方法のほうが面倒で、ドイツ式なら「速くて間違えない」と主張するので不思議です。
親の方にすれば自分が習ってきた方法の方がいいと言いたいところですが、こればっかりはどうにもならないというのが、悩みだそうです。

興味深いのは、どうやら数の世界も言語と同じで、子どもの頃に一度学んだこと、例えば今回のような数字の扱い方も、結局は大人になっても忘れず身に付いてしまうのが現実のようです。
いかがでしたか??
日本式/ドイツ式の是非をここで張り合っても仕方ありませんが、どこまでも「足し算」を基本に計算しているドイツと、「引き算」が暗算でできてしまう日本の計算力は、双方の日常の思考回路の違いにも、多少なりとも影響を与えているのかもしれませんね。

難しいことはともかく、夏休みの宿題をたくさん抱え、早くもため息をついている教室の子どもたちにも、「計算って、いろいろあっておもしろい~っ!!」と思ってくれることを、少し期待している私でぇ~~~す?!

たちのゆみこ