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岡潔に学ぶ 『○○はいいなあ〜』と感じる日本人の心

新年が明け、気がつけば、あっという間に1月が行ってしまいそうで、毎年のことながら、『1月は行く、2月は逃げる、3月は去る…』の早さに、ため息をついています。
さて新年第1回目のメールキッズは、「日本人の心」の起源を探ってみるところからお付き合いください。

『情緒中心の調和が損なわれると人の心は腐敗する。社会も文化もあっという間にとめどなく悪くなってしまう…』

【情緒】の大切さを訴え続けた人に、数学者の岡潔(おか きよし)博士がいます。京都帝国大学を卒業後フランスに留学し、昭和13年、紀見村(現和歌山県橋本市)に帰郷してからは農耕と研究の日々を送った方です。
昭和26年に「多変数解析函数に関する研究」で日本学士院賞、そして昭和35年には文化勲章、同じく昭和38年に初エッセー『春宵十話』で毎日出版文化賞を受賞されました。その著書の中で【情緒】について記されたのが、さきに紹介した言葉です。

また、昭和39年の『風蘭』の中でも『すみれの花を見るとき、あれはすみれの花だと見るのは理性的、知的な見方です。むらさき色だと見るのは理性の世界での感覚的な見方です。そして、それは実際にあると見るのは実在感として見る見方です。これらに対して、すみれの花はいいなぁと見るのが情緒です。』と、書かれています。

このように、「○○はいいなぁ」と感じることが【情緒】で、これこそが人間の精神の土台、古来日本人は【情緒】によって理解しあい、平和で高度な文化を形成してきたのだと岡博士はおっしゃっています。また、だからこそ、はじめての敗戦を経験した後も、日本は滅びずにすんだのだと。
そして、【情緒】には年齢に応じての季節がちゃんとあり、教育もその旬に適した種を蒔かないと発育しない…と、説かれました。

例えば、数え年5歳から道義教育をはじめれば、自他の区別がわかり他人の感情がわかるようになる。さらに、その頃から他人を喜ばせることができるようになる。
一方、喜怒哀楽の感情を子どもの人権や自由と錯覚して放置すると、自分本位の衝動的判断しか出来ない人間に育ってしまうので、感情や本能を抑止する事を教えなくてはならない。
そうしないと【情緒】がでてこない。人の悲しみがわかるのは小学3、4年生頃からで、とにかく小学生の頃までは【情緒】が出来上がる時期なので特に重視しなければならない。【情緒】は愛だから、特に、お母さん方が【情緒】を清く豊かに教育することが肝心であるのだと。
しかし今では、こんなのひと昔前の子育ての話し…と一掃されてしまうかもしれません。また、特に子育て真っ只中のお母さんにとっては、岡博士の言葉はいささか厳しい助言かもしれません。ただここで見極めないといけないのは、【情緒】は、気分とは違うということです。なぜなら、【情緒】とは、その日の気分に左右されて変わるモノではないからです。

『情緒が人そのものだから、これを十分に清く、豊かに、深く育てなければいけない。しかし、今は、情緒中心に育てるということを忘れている。つまり、感情、本能を抑止することを教えないから、情緒がでてくるはずがないのです。(中略)
欲情本能を抑えること、そして、情緒を大切に育てるということが大事です。特に、お 母さん方は、その情緒を清く豊かに教育することです。そうすれば情緒の現われとして出てくる知情意は、全面にわたって間違いなく発育する。‥‥』これこそが、岡 潔に学ぶです。

要するに、自分の気持ちを表すことが苦手と一方的に思いこんでしまったり、人との距離や関係の構築を最初からあきらめていたり…などは、すべて【情緒】とはほど遠い、移ろいがちなそのときの気分に振り回されてしまった結果として起こっていることなのです。
 
岡 潔博士の一連の書籍が出版された昭和30年代の頃と言っても、自分自身が生まれて間もない頃でしたから、その頃のことを振り返ってみて語ることは叶いません。ただ、親を含めた周りの大人たちから受け継いて形成された何かが、いまの自分を形作っていることは言うまでもないことでしょう。
その証拠に、いまでもふとした些細な瞬間に、自分がしてもらった心のよりどころを思い出すときがあるからです。

そんなことのひとつに、『○○はいいなぁ〜』の言葉を心に思い浮かべてみることです。

例えば、「お天気がいいなぁ」「雨の日もいいなぁ」「風が心地いいなぁ」「山はいいなぁ」「雪はいいなぁ」「海はいいなぁ」「釣りは楽しいなぁ」「夕焼けがきれいだなぁ」「静かでいいなぁ」「食事がおいしいなぁ」「お酒がうまいなぁ」「お風呂はいいなぁ」「歩けるのが嬉しいなぁ」…と、いうようにです。

「○○はいいなぁ〜」と、心に問いかけてみることは、まさに自分自身の心に育まれている【情緒】への呼びかけのような気がするのですが、みなさんは、いかがでしょうか?

『○○はいいなぁ〜』をたくさん思い浮かべることで、まだまだこの先いくつになっても、心を磨き続けたいと願う私です。

 

〜たちのゆみこ〜