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書籍/日経Kids+ 8人の識者に聞きました「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」

夏休み真っ最中のある日、たまたま書店で見つけた一冊の本、『子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの』(日経BP社)では、日本を代表する8人の識者の荒俣宏さん/内田樹さん/瀬戸内寂聴さん/坂東眞理子さん/福岡伸一さん/藤原和博さん/茂木健一郎さん/養老孟司さんたち蒼々たる各氏が、子どもたちにそれぞれの言葉で、まじめに「なぜ勉強しないといけないの〜??」について答えています。

この本を書店で見つけたとき、ふと思ったのは、子どもの頃同じように大人に対して質問したとき、「いい学校に入って、いい会社に入って、お給料をたくさんもらえた方が幸せになれるよ〜!」という、身もフタもない返答をされた人が意外と多いのではないかということでした。

なぜって、自分自身もそうでしたが、言われてみて、「そりゃそうだ、がんばって勉強しなくちゃ!」と納得した人はまずいないだろうと思うからです。
それどころか、そんな、にべもない回答で子どもを得心させるのはかえって難しいですし、大人の側も執拗に食い下がってくる子どもに対して、いかに答えるかについて、誰だって悩んだこともあるでしょう。
真っ直ぐな瞳で、子どもに勉強をする意義を問われるのですから、きっと多くの大人は、この難題にひるんだに違いないのではないでしょうか。

そんな大人と子どもの間にある、永遠の謎のようなこの問いに、ひるむことなく正面から回答している識者たちがいるのですから、驚きです!!
その人たちというのが、冒頭で紹介した日本の8名の識者たちなのです。

この本の中で最も興味深いのは、それぞれがそれぞれの言葉で子どもたちに語りかけているところです。
例えば、「人間は動物よりも多く勉強をしたからこそ生き残った」と荒俣宏さんは語り、「勉強をするのは『自分のため』じゃない」と、内田樹さんは言います。
福岡伸一さん、藤原和博さんの二人は、口を揃えて勉強することによって「人は自由になれる」と語っています。

また、坂東さんは「勉強は、し続けなければわからないことを学ぶことで、それはまるで人生と同じ」だと。
寂聴さんは、「勉強は食事と同じ、勉強しないと心が栄養失調になるよ」と警告し、茂木さんも、「自分を輝かせるには勉強しかないよ」と語っています。
また最後に養老さんは、僕はいま75歳、小学校2年のときは戦争が終わったばっかりだったからと、ご自身の子ども時代を振り返りながら、「好きなことを思いっきりやれば誰だって勉強が必要になってきます。『答え』のない疑問こそ、いつまでも持っていないといけない疑問です」と答えています。

いかがでしょうか??
それぞれアプローチこそ違えど、8人の識者は、相手が子どもだと言って適当にあしらうようなことをせず、質問の本質に迫る回答を真剣に子どもにも伝わる平易な言葉で答えているのが伝わってきます。

このありそうでなかったような本を企画し、8人の識者に話を聞いてまとめた育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんは以下のように言っています。

「実は、これまでも、この問題に正面から取り組んで本を書いている人はいるのです。作家の鈴木光司さんや教育ジャーナリストの尾木ママこと尾木直樹さんもこの問いに向き合い本を出されています。それぞれに素晴らしいのですが、この難しい問いへの答えはどうも一つではないのではないかと思いました。もっと複眼的な意見があった方が良いと思い、複数の方の意見を伺ってまとめたのです」と。
幸いにも8人の識者たちは、取材依頼をすると快諾をしてくれたといいますが、この難しくて責任のある、逃げ出したくなるような問いに、よくもこれだけの人たちが回答してくれたものだと、編集者自身が感心することもあったようです。

本書は、まず識者が子どもに向けて語りかける「子ども編」という章から始まります。
この章では、各回答者が平易な言葉で語りかけていて、文章には丁寧に送り仮名がふられていますが、その内容は何度も言いますが、相手が子どもだからといってみくびっていたり、適当にあしらったりすることはまったくないから驚きです。

もちろん、子どもたちが、回答者の真意をすべて汲むことはできないかもしれませんが、それでも小さい頃にわからないながらも大人の人の意見に触れることによって、多感な子どもたちが吸収するものは計りしれないだろうと思ったりもします。

そして、この本がおもしろいのは、後半は「大人編」となっており、「子ども編」の内容がさらに深められて語られていることです。
それぞれの回答に読者は考えさせられ、そして自分がしてきた勉強について考えさせられる・・・というシナリオです。

では、なぜ同じ内容を「子ども編」と「大人編」とに分けたのでしょうか。
編集者のおおたさんによると、「"教育の危機"が叫ばれて久しいですが、一番の危機は、教育の本義が忘れられていることだと思うんです。
教育熱心な親御さんは増えていると思うのですが、そういう人に限って『なぜ勉強をしなくちゃいけないのか』ということを意識していない人が多い気がします」。
またさらに、「もちろん子どもたちにとっても色々なヒントが得られる内容になっているのですが、子どもに勉強をさせる親御さんたちに、もう一度なぜ子どもが勉強をしなくちゃいけないのかをきちっと考えて欲しくて『子ども編』と『大人編』にわけるという構成にしました」と。

この本が本当に必要なのは、どうも子どもたちだけではなさそうです!!

先行きが不透明な世の中になり、子どもの将来のために少しでも高い教育を施したいというのが親心かもしれませんが、ならばこそ上辺だけの学歴の追求に終始しないで欲しいとおおたさんは語っています。

最後に、本書のあとがきに興味深い一節があります。
「子どもに勉強して欲しくてこの本を手に取った人がいるかもしれません。しかし、仮に子どもがこの本を読んだとしても期待するような効果はきっとすぐには表れないと思います。〜中略〜 本書を読んだ子どもたちの心の中に、なんらかの小さな種がまかれ、それがいつか芽吹き、花を咲かせれば、たとえ本書がきっかけだったということを本人がすっかり忘れてしまっていても、それで良いのだと思います」と。

日本の教育の危機が議論されて久しいですが、どれもみんな空回りしている議論のような気がしているのは、私だけでしょうか??
それらの多くが、勉強や教育の目的ついて論じることなく、手段ばかりに終始しているからではないかと、改めて思った1冊の本との出会いでした。

「『答えのない問い』を考え続けよう〜!」という、学びの原点に立ち返って、子どもたちと一緒に、2学期へと突入いたします。

さあ〜〜〜、みなさん、夏休み終わりましたよぉ〜〜!!!

たちのゆみこ