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まっすぐ 命の賛歌 ー詩人 まど・みちおの世界観ふれるー

ぞうさん ぞうさん
おはながながいのね
そうよ
かあさんもながいのよ

きっとたくさんの方が、この歌を子どもの頃に口ずさんだ記憶があることでしょう。

日本の心のふるさとと言える多くの詩と童謡を生み出した詩人のまど・みちおさんが、今年の春を待たず104歳の天命を全うされ旅立たれました。
今月の「めーるきっず通信」は、まどさんの詩の世界を、みなさんとご一緒にのぞいてみたいと思います。

さて、「まどみちお」と聞いても、すでに名前だけではピンとこない方のほうが多いかなと思いますが、童謡の『ぞうさん』『一ねんせいになったら』『やぎさんゆうびん』『ふしぎなポケット』の作詞家と言われると、誰もが懐かしい思い出の曲とともに、どこかで一度は口ずさんだことがある記憶とともに、心があたたかくなるのではないでしょうか??

まどさんが、戦後を代表する『ぞうさん』を書かれたのは1951年。
故・團伊玖磨(だん・いくま)氏が曲をつけ、ラジオで放送され、当時、全国で流れた童謡でした。

まどさんは、『ぞうさん』について、「ほかの動物と違っていても、自分が自分であることは素晴らしいと象はかねがね思っている。自分が自分に生まれたことは素晴らしい」と、この作品のテーマを語っておられます。
まどみちおさんは、山口県の徳山町(現・周南市)生まれです。
6歳の時に、父親の仕事の都合で両親と兄と妹は台湾へ行ってしまい、ご自身は10才になるまで祖父と二人きりの暮らしだったそうです。
当時まだ、小学低学年の間ですから、お母さんと離れ寂しくて、さぞかし恋しかったことでしょう。
『ぞうさん』の歌詞の二番には、「ぞうさん、ぞうさん、だあれがすきなぁの? あのね、かあさんがすきなのよ」とあります。
お母さんへの思いがたくさん詰まっていると思うと、ますます気持ちが熱くなる気がしますが、いかがでしょうか??

まどさんの青年時代は、台湾の学校を出て台湾の総督府で働いていましたが、絵雑誌『コドモノクニ』への投稿が北原白秋に認められ、退職し、27才の時、彼の作った童謡『ふたあつ』がキングレコードの第一回発売の作品となったのです。

ところで、その『ふたあつ』の歌詞とは・・・。

ふたあつ ふたあつ なんでしょね
おめめがいちに ふたつでしょ
おみみもほらね ふたつでしょ

ふたあつ ふたあつ まだあって
おててもいちに ふたつでしょ
あんよもほらね ふたつでしょ

まだまだいいもの なんでしょか
まあるいあれよ かあさんの
おっぱいほらね ふたつでしょ

まどさんは、のちに台北州庁土木課に再就職し、結婚もされましたが、34才の時、応召があり入隊。36才の時にシンガポールで終戦を迎えられました。
翌年、徳山へ帰還し、大阪、神奈川県川崎市へと移ったのち、39才で婦人画報社に入社。『チャイルドブック』を創刊して編集者として10年取り組んでいた43才の時、『ぞうさん』が童謡となって全国で放送されたのです。

50才以降はフリーとなり、詩作に専念されました。まどさんの作品には動物が多く登場しますが、もっとも春を感じさせるものに『くまさん』があります。

はるがきて めがさめて
くまさん ぼんやり かんがえた
さいているのは たんぽぽだが
ええと ぼくは だれだっけ だれだっけ

はるがきて めがさめて
くまさん ぼんやり かわにきた
みずにうつった いいかおみて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな

まどさんは、「世の中に生きる物はすべて、たったひとつの存在です。そのものが、そのものであるということ。
それだけでありがたくうれしく尊いのです」と。
また、「生きていると必ず、毎日、新しく見つけるものがあります」と、晩年のまどさんの試作への情熱は、止まることがなかったようです。

そのスケールは動物や自然界をこえて宇宙にまで広がり、こんな言葉も残しておられます。
「池の水面をアメンボが動くと、アメンボの周りに輪が広がります。不思議だな〜と思います。あんなに小さいのに、あんなに大きな水を動かすなんて」

そして、こんな詩が生まれました。
『えいえんにゆたかに』

植物は
いつも しずかで
わたしたち どうぶつの
やさしい ねえさんのようだ

鉱物は
どっしりと おちついていて
たのもしい にいさんのようだ
やさしい ねえさんの そのまた うえの

わたしがこんなことを おもっているいまも
宇宙は ただ
はるばると ほほえんでいるのか

この世界中の
どんなちいさな ちり一つでさえもみまもって
お母さんらしく
えいえんに ゆたかに

まどみちおさんは、星になられました。
そして彼の作った童謡が永遠に次代を担うこどもたちを見守り、受け継がれていくことでしょう。
まどさんは、百年生きて書くことがなくなるどころか、今だからこそ書かないとという強い姿勢をたえず持っておられました。

もっと、もっと、生きて書いて欲しかった〜と、そんな気がしてなりませんが、誰の心にもまっすぐ届く言葉で詩を書き続けたまどさん、きっといまも子どもたちの幸せを祈って、星になっても書き続けておられるような気がします。

心より、ご冥福を祈ります。

たちのゆみこ